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愛国心で経済再生(国際派日本人養成講座582)

注)以下はメールマガジン「国際派日本人養成講座」からの引用です。
興味のある方は、メールマガジンを受信すれば、定期的に読むことが出来ます。


 消費者と企業が、その消費と生産にささやかな
 愛国心を込めれば、日本経済は再生する。

■1.「森林大国が木材輸入大国」という矛盾■

「100年に一度」と言われる大不況の中でも、明るいニュー
スはあるものだ。林野庁によれば、木材の国内自給率が上昇傾
向にあるという。と言ってもまだ22.6パーセント(平成
19年)だが、前年から2.3ポイントも上昇している。[1]。

 我が国は世界有数の森林大国でありながら、世界最大の木材
輸入国でもある。

我が国土の緑被率(森林が国土に占める割合)は67%と、
フィンランドの69%に続いて世界第2位。その森林を健全に
保つためには、木を間引いて間隔を空けたり、枯れかかった木
を除く間伐が行われる。この間伐材が年間5千万立米ほど発生
するが、実際の需要はその三分の一ほどでしかなかった。間伐
は手間がかかるので、値段が高いためだ。

木材需要全体では1億立米もあるのだが、その大半が安い輸
入材でまかなわれる。大手の住宅建設企業が安価で安定的な木
材供給を求めて、国産材から輸入材にシフトしたのである。

こうして国内の大量の間伐材はムダにされて、海外材を輸入
するというおかしな事になった。国内では間伐が進まないと、
森林が荒れてくる。同時に海外での乱伐はその国の自然を破壊
する。どこかがおかしいのではないか。

木材の国内自給率が上昇している、ということは、豊かな森
林を抱える地方経済が活性化し、同時に国内と海外の森林保全
が進む、ということである。


■2.消費者のこだわり、企業と地方自治体の努力■

なぜ木材自給率が上昇しているのか。

一つの要因は消費者の中に国産材へのこだわりが根強くある
ということだ。コマなど木の玩具を作っているメーカーの社長
は、「子どもが触れるので薬品などが心配という声もあり、国
内の木を主に使っています」と言う。またある大手住宅メーカ
ーは、「高品質なイメージがあることから、国産にこだわるお
客様の需要が結構あります」と語っている[1]。

同時にメーカー側の国産材利用の技術開発も進んでいる。住
宅の床や壁、家具などに使われる合板は、以前は間伐材の細い
丸太から作ることができず、外国産の太い丸太を使っていた。
しかし、輸出国での環境規制などによる輸入材の価格上昇もあっ
て、製材業者が技術開発を進め、安価な細い間伐材が使えるよ
うになった。現在、合板の52パーセントは国産材でまかなわ
れるようになっている。また住友林業は国産材100パーセン
トの「究極エコ住宅」を販売している。

さらに地方自治体と企業が協力して、間伐を進める取り組み
も広がりつつある。高知県では平成17(2005)年から「協働の
森づくり事業」として、企業や団体から協賛金を集め、市町村
有林の間伐を進めている。30以上の企業・団体と契約し、約
17平方キロの山林を対象としている。間伐は森林の温暖化ガ
ス吸収を高めるため、企業は「○○トンのCO2吸収に貢献し
た」とアピールできる。また社員らのボランティア活動や環境
研修にも活用できる。

こうして、消費者の国産材へのこだわり、企業側の技術開発、
地方自治体の後押しと、三者の努力があいまって国産材の有効
活用が進んだ。国産材活用がさらに拡大していけば、森林を美
しく健やかに保ち、かつ地方経済の活性化にもつながっていく。


■3.愛国心で経済再生■

名城大学教授・磯前秀二氏は著書『愛国心の経済学』の中で、
こう主張している。[2,p3]

 ・・・私たち日本人がしかと愛国心を身に付ければ、
「日本社会のソフト力」が飛躍的に高まり、日本経済は再
生軌道に乗るだろう・・・

木材自給率の向上は、この一例だ。木材自給率の向上によっ
て、間伐材を供給する地方が潤い、住宅メーカーの利益は向上
し、消費者も安くて安全な木造住宅や木造りの家具・玩具など
が買える。それだけ日本経済は豊かになる。

こうした変化をもたらしたのは、間伐材を利用する技術開発
や、「協働の森づくり事業」のような仕組みのお陰である。こ
うした技術や仕組みが「日本社会のソフト力」だろう。

そして、この「ソフト力」が高まったのも、消費者、企業、
地方自治体のそれぞれが「日本の森林を護ろう」と志した「愛
国心」の賜物である。

これに比べれば、かつて住宅メーカーが安い海外材に切り替
えて、国内では間伐が進まずに森林荒廃、海外では乱伐と、地
球環境悪化を招いたのとは対照的である。目先の利益のみ追っ
ていたのでは、結局、行き詰まって、経済もうまくいかなくなっ
てしまう。

迂遠なようだが、日本の森林を大切にしようとする愛国心が、
地球環境を保護し、健全な経済発展をもたらすのである。


■4.日本のおかしな食糧事情■

自給率と言えば、食料の問題もある。日本は世界最大の食糧
輸入国で、食糧自給率はカロリーベースで39パーセントと、
主要先進国で最低の水準である。

その一方で、政府はコメの減反政策(作付面積を減らして生
産量を抑える政策)を続け、今や減反面積は水田の約4割に達
した。米作の生産性向上により供給が増える一方で、食生活の
変化によりコメの消費量が減り、売れ残りが生じてきたためで
ある。耕作放棄地も、この狭い国土で埼玉県に匹敵する面積と
なっている。

この状況は国民の大半がおかしいと感じている。95パーセ
ントが食料の確保に不安を感じ、85パーセントの人が減反政
策を見直すべき、と考えている。[3]

自給率の低下は安全保障上の問題を引き起こすだけではない。
国土の荒廃をもたらし、国民生活に損害を与える。日本学術会
議が平成13(2001)年に発表した「地球環境・人間生活にかか
わる農業及び森林の多面的な機能の評価について」によると、
農地と森林は毎年、次のような効用を生んでいる。[4,a]

・洪水防止機能      3兆5千億円
・水源涵養機能      1兆5千億円
・土砂崩壊防止機能      5千億円
・土壌浸食防止機能      3千億円
・保健休養・やすらぎ機能 2兆4千億円

合計8兆2千億円と、国民一人あたり年間6万5千円もの価
値を毎年、生んでくれている。言い換えれば、農地・森林が失
われることで、洪水や水不足、土砂崩壊、さらには観光資源の
減少によって、国家経済上も大きな損失を被ることになる。


■5.地球0.4周分の食料輸入距離■

さらに海外からの食料輸入は、ムダなエネルギーを使う。

消費される食料の量に運搬距離をかけ合わせたフードマイレ
ージという尺度がある。我が国の食料輸入量(平成13年)は
5万8469トン、平均輸送距離は1万5396キロメートル
(地球の約0.4周分!)で、フードマイレージは約9千億キ
ロ・トン。世界ダントツの一位で、2位の韓国、3位のアメリ
カの約3倍と突出している。

全国民の食料の6割を、地球の0.4周分もはるばる運んで
いては、輸送エネルギーも膨大である。輸入小麦で作った食パ
ン1斤を国産小麦製のものに変えるだけで、クールビス2日分
以上のCO2抑制効果がある、という。

結局、国民が食料安全保障にも、国土保全にも、地球環境に
も気を使わず、安くて良いものなら、どこからでも買うという
自己本位の消費を続けた結果が、こんな矛盾を生んでいるので
ある。


■6.「地域の共同体が農業を支える」■

さて、この問題にも磯前教授の提案する「愛国心で経済再生」
のアプローチが有効である。実際に各国でそのような運動が始
まっている。[5]

北イタリアで始まった「スローフード運動」は、現在100
カ国以上に広がっている。ハンバーガーやフライドポテトのよ
うな「ファーストフード」が大量生産された輸入食材を使い、
世界どこでも均一化された加工食品を提供するのに対して、
「スローフード」は「郷土料理や質の高い食品を守る」「素材
を提供する生産者を守る」「消費者全体に食の教育を進める」
といったテーマのもとに、「地方の食文化」を伝え残そうとい
う活動である。

「農と自然の研究所」代表理事の宇根豊氏はドイツでのこんな
体験を紹介している。[4]

ある村ではリンゴをジュースに加工して付加価値を付け
て販売していた。そのリンゴジュースが飛ぶように売れて
いるのだそうだ。・・・町の人たちは「このリンゴジュー
スを買って飲まないと、あの村の美しい風景が荒れ果てて
しまう」と言って買うのだそうである。・・・リンゴはリ
ンゴだけでは育たない。

同様に米国でもCSA (Community Support Agriculture)と
いう取り組みがある。「地域の共同体が農業を支える」という
意味で、一年分の農産物の購入を事前に契約するなど地域の農
業を消費者が支援し、環境保護と地域コミュニティーの維持を
目指す活動である。

我が国でも「地域の産物を地域で消費しよう」という「地産
地消」活動が広がっている。


■7.ごはん一杯で経済再生■

こうした郷土愛や祖国愛が、どれほどの経済再生効果を持つ
のか。

「ごはんを食べよう国民運動推進協議会」は、われわれが毎日
ごはんをもう一杯多く食べるだけで次のような効果がある、と
いう試算を発表している。[5]

・食糧自給率が8%向上。
・転作された田が、60万ヘクタール、水田に蘇る。
・貯水機能が12億トン(東京ドーム1000杯分)高ま
り、洪水、水不足を防止する。
・稲の光合成により二酸化炭素を300万トン(東京ドー
ム1520杯)吸収する。

現在の農業就業者人口約300万人が、食糧自給率に比例し
て増大するとすれば、自給率の40%から48%への向上は、
60万人分の仕事を生み出す。

昨今、話題になっている派遣労働者たちにも、豊かな就業機
会を提供できる。そして若い人たちが高齢化が進む農村に入れ
ば、地域の活性化も大きく進むだろう。

またご飯を中心とする日本型食生活はビタミンやミネラルを
豊富に含み、健康にも良い[b]。それによって健康寿命を伸ば
し、医療や介護費用を大きく節減することができる。

政府の経済財政諮問会議が打ち出した「日本21世紀ビジョ
ン」では、「80歳健康大国」を目標の一つに掲げている。健
康に生活できる「健康寿命」を75歳から80歳に伸ばす、と
いう内容である。

「健康寿命」後の介護が必要な期間を短縮することで、医療
・介護費用は大きく減る。岩本康志・東京大学大学院教授は、
 国民一人あたりの医療・介護費用(自己負担含め)の減少分を
 728万円と試算している。

一方、平均寿命が延びることで年金費用は455万円増加す
るが、差し引きでも273万円もの費用節減になる。それだけ
政府の財政再建にもつながるわけである[2,p95]。

もっとも年金の増加は、お年寄りが老後も健康で楽しく暮ら
せるためのもので、後ろ向きの医療・介護費用に比べれば、は
るかに生きたお金の使い方である。


■8.立派な企業、格好良い消費者■

以上、木材と食料の自給率の問題を見てみたが、問題の発端
は、安くて良いものであれば、どこから、どんな過程で生産さ
れたものでもこだわりなく購入する消費者の自己本位の態度で
あった。

そうした消費者のニーズに応えるべく、企業は外国産の木材
や食料を大量に買い付け、国内に供給した。それにより海外で
環境破壊を起こしたり、輸入のための膨大なエネルギーのムダ
を発生させた。

同時に、価格競争力を持たない国内の農業・林業は廃れる一
方となった。行き詰まった農家を助けるために、膨大な国家予
算が投入されても、問題解決の兆しは一向に見えない。また荒
れ果てた自然は水害などを引き起こし、災害対策のための税金
投入も必要となる。

経済学においては、消費者も企業もそれぞれの利益を最大化
する事を目標として自己本位に行動すると仮定するが、それは
金額に現れない悪影響を自然や社会に与える場合が少なくない。
そして現代の巨大な消費量・生産量は、地球環境や地域経済、
国家財政すら破壊しかねないほどの影響力を持つ。

この袋小路から逃れるためには、まずは消費者や企業が自己
本位の態度を改め、少しでも郷土愛、祖国愛、人類愛を込めて、
消費や生産を行うことである。そのような消費者や企業が現れ
つつあることは、冒頭の木材自給率向上の例でも示した通りで
ある。

国産の木材で家屋・家具・玩具を製造し販売する企業は立派
である。それらを購入する消費者も格好良い。これらの企業や
消費者は、自らの生産や消費を通じて、日本の森林と地方経済
の再生に貢献しているのだから。

こんな感覚が一般的となって、立派さ、格好良さを競争する
ようになれば、我が国の国土も経済も国家も健全に発展してい
くだろう。やはり愛国心こそ、その原動力である。
(文責:伊勢雅臣)

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