「向こうの叔父さんが亡くなったみたいだけど」
新聞の広告で見た母から携帯にメールが入っていた。
「向こうの」というのは、母にとっては40年以上前に別れた夫の弟だからである。
私は実父とは諸事情のためもう長らく会っていない。
しかし、叔父の住んでいた市に泊まりの出張が多かった頃は、叔父の家によく寄らせてもらい、物の高価な洋酒を飲ませてもらったものだった。
「お前が来るたびに、せっかくの酒が1本無くなる」
と言いながら、気まぐれに訪ねてくるような甥っ子を、いつも暖かく迎えてくれた。
私の身内は、幸いなことに長生きしている者が多い。
初めての身内の葬儀は、小学校5年の母方の祖父で、当時は子どもだったことも あり、今ほど死に対する意識は無かった。
その後、30年近くが過ぎ、長らく同居していた母方の祖母が亡くなった。
祖母はあまり私に何も残さなかったというか、20年も二人で暮らしていたにも関わらず、あっけらかんとしたものだった。
斎場で火葬を待つ間、ひさしぶりに叔母と話した。
現在は施設で寝たきり生活をしている実父に一度は会いに行くことを勧められた。