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夢と希望の長寿大国(国際派日本人養成講座から)

注)以下はメールマガジン「国際派日本人養成講座」からの引用です。
興味のある方は、メールマガジンを受信すれば、定期的に読むことが出来ます。



世界一の長寿を、健康で活き活きと過ごせる夢の技術が開発されつつある。

■1.世界最速、最高水準の高齢化

「この国には何でもある。だが、希望だけがない」などという悲観論が幅を効かせている理由の一つとして、少子高齢化の傾向がある。高齢化により年金生活者ばかりが増え、人口も減少して経済が縮小していく、という暗鬱な未来像が、マスコミで喧伝されている。

確かに我が国の高齢化は、史上、例がないスピードで進んでいる。昭和25(1950)年に高齢化率(総人口に占める65歳以上の人の割合)5%だったのが、平成17(2005)年には20%を超えて、世界最高となった。50年後の平成65(2055)年には高齢化率40%超という未曾有の事態となる。

平成7(1995)年には高齢者1人を生産年齢人口(15〜64歳)4.8人で支
えていたのものが、平成65(2055)年には1.3人で支える勘定だ。こんな数値を語られたら、若者が希望をなくすのも当然である。


■2.世界最先端の高齢化社会の課題を世界最先端の技術で解決

しかし弊誌は、こうした報道は、我が国社会を常に暗く描く偏向報道の一種ではないか、と考える。

今の日本のお年寄りは、世界最高水準の長寿を誇るだけでなく、昔に比べればはるかに若々しいので、65歳を超えてもまだまだ働きたいという人も多い。仮に定年を10年伸ばして、15〜74歳までを生産年齢人口とすれば、平成65(2055)年でも、75歳以上の高齢者1人を、約2人の現役世代が支えれば良いことになる。

現在の我が国の平均寿命は、女性は86.39歳で世界一、男性は79.64歳で世界第4位である。第4位と言っても、上を行くのは香港、スイス、イスラエルといった人口数百万人規模の小国・地域ばかりなので、人口1千万以上の中・大規模の国の中では男女とも堂々の1位である。

昔から長寿は人間の幸福の一大要素であった。しかも、その長寿の人生で、末永く、好きな仕事に打ち込み、それで世のため人のために尽くせたら、こんなに幸せなことはないだろう。

お隣の中国では、一人っ子政策が災いして、急速に高齢化が進み、2010年代後半から労働人口が減少すると予測されている。国民全体が豊かになる前に、しかも医療・保険制度も不十分、所得格差世界最大級という中で、高齢化社会に突入する。その中国に比べれば、日本に生まれた我々の幸運に感謝あるのみである。

しかし、寝たきりになったり、ボケてしまっては、せっかくの長寿が活かせない。実は、そうならないよう、我が国では各方面で高齢化社会を支える技術開発が進んでいる。

世界最先端の高齢化社会の課題を、世界最先端の技術で解決しようとしているわけで、その技術は世界の高齢者を支えるかけがえのないものとなろう。今回は、その最前線を見てみよう。


■3.脳波で動くロボット・スーツ

人間がぬいぐるみのようなロボットに乗り込んで、手足を動かすと、その通り、ロボットが動くというSF映画を見たことがあるだろうか。最近の映画『アバター』では最後のクライマックス・シーンで、敵役がこれを着て、主人公と戦った。

これをさらに小型にして、身につける「ロボット・スーツHAL」がすでに我が国で開発されている。脚が弱って歩けない人でも、ロボット・スーツが両足を支えて、スタスタ歩けるようになる。、手の力が弱って、重いものを持てない人も、腕を支えて力を貸してくれる。

ロボット・スーツの操縦は、手足で操縦していたSF映画よりもさらに進んでいる。ロボット・スーツが脳波を捉えて、体を動かしたいと思うだけで、その動きを助けてくれるからだ。

脚を前に出したいと思うと、脳から脊髄の方にイオン電流の形で信号が流れる。皮膚表面にもそのイオン電流が漏れでてくるので、センサーで検知して、動きたいと思う動作を先取りして、ロボット・スーツが動いてくれる、という優れものである。

おそらくこういう製品の課題は、長期信頼性やコストだと思うが、このあたりの量産技術は、自動車でも見られたように、日本製造業のお家芸である。

やがて、寝たきりだったお年寄りも、これを着て、続々と社会復帰する、という光景が実現するのではないか。高齢化が心配されている農業や林業でも、ロボット・スーツを着用した高齢者が重作業でも楽々とこなすことができる。


■4.ロボット・スーツはいかに生まれたのか

ロボット・スーツHALの開発の中心となっているのは、筑波大学大学院の山海嘉之(さんかい・よしゆき)教授である。山海教授は子供の頃、アイザック・アシモフのSF小説『私はロボット』を読んで、「科学者の生き方というのはとても魅力的だな。自分もそういうものを創りだしてみたいな」と思ったという。

それで教科書でカエルの足に電極を接触させる実験を見て、興味を持ち、自分で作った発振器でカエルの筋肉に電気を通じ、どのくらいの周波数で、どのくらい収縮するかを調べたりした。やり始めると夢中になって、毎日飽きもせずに何時間もやっていたという。

ロボット・スーツHALの開発も、生理学や工学の境界を超えて取り組んでいるので、やっていることは小学校の頃とほとんど同じだと言う。

『私は好きなことが見つかった段階で、才能がひとつ見つかったのと同じようなものだと思うのです。ですから、子供時代に思いっきりのめり込めるものを持っていた私は、非常に幸運でした』

そして、そこから、HALにたどり着いた経緯をこう語る。

『私はもともと人間が好きで、社会や人に役立つテクノロジーというものを常に意識していました。人とテクノロジーがどうして一緒になっていくのがいいのかと模索を続けた結果、HALに結びついたのです』

好きなもの夢中になって打ち込みながら、それが世の中の役に立つ。これこそが理想の生き方であろう。ロボット・スーツで社会復帰するお年寄り方にも、ぜひそんな生き方をしていただきたいものだ。


■5.高齢者に優しいEV(電気自動車)

大都市圏は除いて、仕事や生活に車が必需品という地域は多い。徒歩圏内に生鮮食料品店が存在しない世帯数は現在約46万世帯もあるが、地域人口減少と店舗閉鎖に伴い、約114万世帯に増加する、という展望を国土交通省が示している。

しかし、現在の車は、高齢者が使うには難しい。高齢ドライバーによる交通事故件数は、平成11(1999)年の6万3千件から、平成21(2009)年には10万5千件と急増した。一方、事故を恐れて運転免許を返納する高齢ドライバーも多い。平成21(2009)年には、13万4千件の免許返納があった。

そこで、高齢者に優しい自動車を開発しようという試みが推進されている。国土交通省、福岡県、自動車メーカーなどの協力で、高齢者が使いやすい二人乗りのEV(電気自動車)を目指している。

EVに絞ったのは、地方ではガソリンスタンドが次々と閉鎖される中、家のコンセントで手軽に充電できるからだ。

将来は、ロボット・スーツの技術を使って、脳波で動く自動車ができるだろう。


■6.70年は使い続けられる人工関節

ロボット・スーツまで行かなくとも、高齢者に多い関節リュウマチや変形関節症の痛みをなくし、動きをある程度回復する技術が開発されつつある。

人工関節を人体に埋め込むという手術で、国内だけで人工膝関節は年間7万件、人工股関節は約10万件に上るという。しかし、現在の人工関節は、使っているうちに表面が削れ、粉が発生する。

その粉に対して細胞が免疫反応を起こすと、周辺の骨が少しづつ消失して、人工関節がゆるくなり、再手術が必要となることがあった。

そこで、京セラグループの日本メディカルマテリアル(JMM)が開発したのが、摩擦が少なく、免疫反応も起こしにくい生体親和ポリマーを使った人工股関節である。

これだと「70年は使い続けられそうだ」ということで、大人なら一度、手術すれば、生涯使えることになる。世界的に見ても人工関節の手術件数は増加すると見込まれているが、世界の患者に感謝される技術となろう。


■7.難聴、難視も解決するiPS細胞技術

高齢化で衰えるのは、体力だけではない。耳が遠くなったり、目が悪くなったりする。現在は、補聴器や眼鏡などで補っているが、程度がひどくなると、これらでは間に合わない。

この問題を一挙に解決する可能性を秘めているのが、iPS細胞の技術である。
iPS細胞とは、体を構成する多種多様な細胞に分化成長する能力を持った万能細胞である。

たとえば老人性難聴は、音を電気信号に変えて脳に伝える内耳の聴神経細胞が傷つくことによって起こる。ここで、患者自身の皮膚細胞などからiPS細胞を作り、それを聴神経細胞として成長させて移植すれば、難聴が改善できる。すでに京都大学病院では、こうした方法で、モルモットや猿の難聴改善に成功している。

また、目の難病である加齢黄斑変性は、失明につながる病気で、高齢者で増えている。これも、iPS細胞技術を使って、患者の皮膚細胞を「網膜色素上皮細胞」に分化させ、傷んだ細胞と置き換える移植手術をする。平成25(2013)年から、臨床研究が始められる計画だ。

こうしたiPS細胞の技術開発を世界的にリードしているのが、京都大学の山中伸弥・京都大教授である。iPS細胞の作成に関する基本特許を、欧州や米国でも取得。世界のiPS細胞関連の特許を京大がほぼ独占している。山中教授は、現在、ノーベル賞候補にあがっていると言われている。

山中教授はもともと整形外科医だったが、脊髄損傷など治療できないものも多いことを知り、改めて研究をしっかりやろうと決心した。研究成果を医療につなげたいという気持ちで、研究に意欲を燃やしてきた、という。


■8.老人性認知症の根治に光明

こうした技術で、体は元気になっても、老人性認知症などになってしまって
は、仕事を続けることはできない。入浴や排泄に介護を必要となると、家族も社会も負担が大変だ。国内の認知症高齢者は推定230万人もいる。その6割が、アルツハイマー型で、脳全体が萎縮してしまう。

平成9(1997)年にエーザイが世界に送り出したアルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」の生みの親、杉本八郎氏。アリセプトは認知症の進行を遅らせる薬だが、「根治薬はいつできますか」と患者から何度も聞かれて、杉本氏は奮起した。

現在、京都大学客員教授として、京大発ベンチャー「フェルマエイト」で、老人性認知症の根治薬開発に取り組んでいる。

インドのアルツハイマー発症率が米国の4分の1と低い事に着目し、その原因として、カレーの粉ウコンの効果が判明した。この成分をもとに、約千種類の分子を設計して、候補化合物を絞り込んだ。平成25(2013)年からは、米国での臨床試験開始を目指している。


■9.幸福なる長寿大国へ

20歳前後から仕事を始め、75歳まで現役で働くとすると、50数年もの期間を働くということになる。現在の30数年の仕事の後で、さらに20年もの期間がある。第2のキャリアを持つ二毛作人生が可能となる。

第1のキャリアで培った専門技術、経験、見識を、第2のキャリアに生かせ
ば、非常に高い知的生産性を達成できるだろう。高齢化社会は、知的生産性の高い技術大国、芸術大国への道でもある。

同時に、ここで紹介したロボット・スーツ、人工関節、iPS細胞技術、そしてアルツハイマー治療薬などを含め、高齢者でも元気に活躍できる製品、技術は、主要輸出産業として、我が国の経済を支える柱になるだろう。

労働を神が人類に与えた罰とするキリスト教社会では、早く一財産こしらえ
て、さっさと退職して遊んで暮らすことを理想としている向きがあるようだが、我が国の神話では、神々自身が、田を耕したり、糸を紡いだりして、労働にいそしんでいる。

仕事を楽しみながら、仕事を通じて世のため人のために貢献して生きがいを得る。世界一の長寿を、そのような形で最後まで充実して過ごせる幸福なる長寿大国、それが我が国の目指す道である。

(文責:伊勢雅臣)
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